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dolog=blogにdo、動詞をつけた造語です。 情報選択行動のlog(記録)として書いていきます。

FOOTBALL PERIODISATION参加してきました

スペシャリストとは何を持ってスペシャリストなのか

今回、オランダ人コンディショニングコーチであるレイモンド・フェルヘイエン氏によるFOOTBALL PERIODISATION(サッカーのピリオダイゼーション)セミナー(WFA*1主催、J-DREAM*2共催)に参加してまいりました。

一年ぶりとなるセミナー参加でしたが、前回がアドバンスドコースのLevel 1ということで、今回はアドバンスドコースLevel 2とスペシャリストコースLevel 1という内容でした。

スポーツトレーニングを学んだことがある方には馴染み深い“ピリオダイゼーション”ですが…という流れは、以前、ブログ記事({DE}dolog サッカーのピリオダイゼーションってご存知ですか? - {DE}dolog)前回のアドバンスドコースの内容も紹介しながら書いてあるので、参考までにご覧になってください。

前回から

前回のセミナーから一年、アドバンスの続きを取り組んだわけですが、その内容は「外部要因から影響を受けた場合」の対処です。
しかし、これについては、原則がきちんと踏まえられておれば問題のない話で、きちんとフットボールピリオダイゼーションがどんな原則から成立しており、どのような経過を経て行われるものなのかを把握していることで、どんなイレギュラーがあろうと対応できる、と

また、単独でフィットネステストを行うには何がいいのか、なんて無粋なことを問題提起してました。(あえて無粋なこと、と表現します。)
元々、レイモンドはフィットネス界の人間がフィットネスの用語を使ってサッカーのフィジカルトレーニングを考え、実践することを否定した人です。

結果、見事でした。

何が見事かって、レイモンドはきちんと自らが提唱するフットボールピリオダイゼーションを実施した結果、いわゆるシャトルランテストの結果も、研究ラボで図るVO2Maxも、心拍数の回復度合いもすべて改善する、ということをEvidence Base*3で証明して見せました。

さすが、としか言いようがありませんでした。

”FOOTBALLにおけるPSYCHOLOGY TRAINING”とは

今回のセミナーのメインと言っていい内容だったと思います。
いわゆる「メンタル」という分野に対してのトレーニングを皆さんは、どのようになさっていますか?

最近ではある芸人さんがこの言葉を使って生き残りをかけていますが…(←)

パンサー - YouTube

レイモンドは例のごとく言います。
「メンタルの専門家がフットボールのフィールドでメンタル分野の言葉を使ってトレーニングをする。これはおかしい」

「FOOTBALLを理解しない人間が、自らのフィールドの言葉を使って、指導することは、FOOTBALLじゃない。FOOTBALLの質を高めるためにトレーニングするのであれば、FOOTBALLの言葉に置き換えて考えられなくてはならないハズだ。」

ここでもレイモンドのFOOTBALL愛が感じられます。

具体例に入ります。
選手がプレーをしていて、ミスをしたとします。
例えば試合開始15分程度まで、戦術的に機能したとはとてもいえないプレーをしていた選手がいたとします。

「集中しろ!」「寝てんじゃない!」なんてことばが出てきそうなプレー。

この「集中」という言葉自体がフットボールではない、というわけです。
これは現象に対する主観的な感想です。
その集中していないプレーは「現実としてどんなプレーの結果」を産んだのでしょう。

相手のボール保持者に対してのプレッシャーが甘くなってしまったがため、守備を簡単に崩されてしまったのか。攻守の切り替えが著しく遅れたため、相手に存分なプレーエリアを提供したのか、など

“事実”として選手がしたプレーが「集中しろ」という言葉の裏には存在するわけです。
その事実を選手と指導者が共感する必要があり、その為には選手は常に考え続けなければなりません。

どんなプレーをすべきなのか。
そのプレーの後にはどんな結果が予測され、そのために全力を尽くすことを常に意識し、考え続けることです。

ものすごく簡略的に言ってしまえば、「余計なことを考えずにプレーしろ」ってことですね。

サッカー選手って、ものすごく多くのストレッサーに身を晒されています。

メディア、サポーター、重要な試合、ライバル、レフェリング…
それら外部環境にプレーを左右されてもおかしくないぐらいに様々なものが取り巻いています。

ネガティブな思考が身体動作を制御しはじめれば、それに応じてネガティブなホルモンが分泌されます。自らが思考をコントロールすべきであると語るレイモンド。そんなレイモンドから途中、Meditationという言葉が頻繁に出てきました。

これは「瞑想」「黙想」という意味で、まさかレイモンドが瞑想を連呼するなんて…キーワードは「禅」かな、と。
*ただし、禅であればレイモンドは日本で禅堂に行って見たのかどうかを聞いてみたい気もします…。野暮ですね。失礼しました。

ボクは日本人ですが、深いところはわかりませんけど、外部からの雑念を一切遮断する「禅」を理解は出来ます。欧米人の基質がどんなものなのかをキチンを把握していないのですが、長谷部みたいに「心を整える」日本人に比べたら荒々しいのかな?というところがMeditationという言葉を使った理由があると思うんです。

ボクなんかはこのFOOTBALL THINKINGの話を聞いていて、本田圭佑選手がすぐに思い浮かびましたよ。時として納得の行かないレフェリングに不満な顔をすることがあるにしても、彼は常に自らのプレーのことを考え続けているように見受けられます。


本田圭佑 Keisuke Honda 2013 - All goals&skill(CSKA ...

ボールの行方や味方のポジションや相手の状態、など
サッカーをすることに意識を注いでいることがすごくわかるプレイヤーなんですよね。
あ、個人的な意見です。

彼みたいなプレイヤーはレイモンド的にいえばGOOD PLAYERなのではないでしょうか。

”ACTIONとは環境との相互作用”

ボクが今回のセミナーに参加して、一番聞けてよかったと思ったのは「ACTIONとは環境との相互作用だ」という文言。

ここ、サッカーに主軸を置かれている方々がどのようにとらえたのかが非常に気になるのですが…
外部の環境に対して、人間が能動的に働きかけることがACTIONだ!とレイモンドが言ったのです。

これ、ライプツィヒ学派の「コンピテンツモデル(1967 OLBRICH,Hirtz)((KoLeSpo講座資料より 」で説明できると思うんです。
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詳しくはこちらから
ドイツはライプツィヒからの帰国 その8 - {DE}dolog


つまり、様々な外部環境にさらされながらも、質の高い動きをする、その過程が何よりも大切なんだ、と。
レイモンドのいうフットボールピリオダイゼーションは、結果に至るまでの過程をより良くするためのものであり、結果を高めるための手段でしかない、とセミナーの最後には言っていたのですが、個人的に一番の肝がここにあるのではないか、と感じています。

もちろん、レイモンドはこのピリオダイゼーションで結果を出してきました
ですが、結果というのは絶対的なものではなく、相対的(他の環境や要因に左右される)なもので、尚且つ、不可逆(元に戻れない性質)なものです。

レイモンドだっていくつもの失敗を重ねて、現在があるわけですから、結果までをコントロールしてきたわけではありません。

ここまで真剣に考え実践してきたのは、フットボール選手の質の高い動きの追求や、負荷のコントロールなどフットボールをより良くするための方策を考えてきたことです。その結果、試合に勝つことが出来て来たわけで、初めから勝つことを意識していたのではないと思います。

如何に選手が結果を出すまでの過程を手助けできるのかどうかを考えてきた結果としてFOOTBALL PERIODISATIONが生まれたんだと思います。

だから、指導する立場にいる人間として、指導対象が如何に環境や状況といったものに対峙・適応していくのかの手助けを意識してこうと強く思いました。

そして、何より、レイモンドはProfessionalでした。

100%を求めるのであれば、100%でいろよってね。

*1:ワールドフットボールアカデミーhttp://www.worldfootballacademy.jp/

*2:オランダにある日本人サッカークラブhttp://www.jdream.nl/index.php

*3:根拠に基づいた