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dolog=blogにdo、動詞をつけた造語です。 情報選択行動のlog(記録)として書いていきます。

ドイツはライプツィヒからの帰国 その12

今回も前回に引き続き「発育発達学」です。



今回はその中でも“感受期”というものについてお話しさせていただきたいと思います。

前回の内容は、歴年齢と生物学的年齢に触れた上で、それを踏まえた上でのトレーニングをプログラミングしない事には、生物学的年齢でいうところの“早熟”の選手ばかり選抜してしまうという危険性を示唆させていただきました。



さて、今回は、どの時期にどんな刺激が生体内に受け入れやすいのか、というものがあり、それをライプツィヒ学派では「感受期」と言います。



感受期というのは、“各運動能力(各パフォーマンス前提)が向上しやすい”時期の事を指します。トレーニングを実施する上で非常に有利な時期であり、それはつまり、この感受期の把握がトレーニングのプランニングにおいて不可欠なものとなります。



女子は、男子の2年先じているのですが、これは性成熟の違いであり、女子の方が成熟期を迎えるのが早く、それに伴って感受期が男子よりも早くなります。

女子・男子間の差異は、ちからは後々男子が大きくリードします。エレメンタルスピードに関しては大きな差が無く、可動性に関しては女子が大きくリードします。



ここで大切なのは、その様々な刺激が受け入れやすい時期があるけれど、それは“生物学的年齢”を基軸にした上で考えるものであり、あくまでも“歴年齢”で決めてはいけないものだという事を改めて強調したいと思います。





では、“成熟期”(前回も触れましたが、日本でいうところの“思春期”)について。

これは性成熟が基となったものであり、青少年期のスタートというのは、性ホルモンの増加とイコールで結ばれます。

という事は、青少年期の終わりは性成熟の完成を意味し、成人期がスタートする事を指します。



「第一成熟期」

この時期の運動発育発達における特徴は、“運動能力と運動技能の再編成”です。



この時期、生体は縦軸方向の成長し、胴体の成長率よりも四肢の成長率が向上します。

という事は、手足が長くなってプロポーションが変化する事で、今まで獲得したコオーディネーション能力の停滞を招きます。



手足が長くなってしまったが為に、自身の今まで獲得した動作感覚をプロポーションの変化と共に失いかけては構築し直して、という作業を繰り返す形になりますので、新しい動作習得は不利と言わざるを得ません。



なんですが、コオーディネーショントレーニングは継続して行われるべきです。

というのも、このブログシリーズ(その8)でも原則的なところに触れていますが、コオーディネーショントレーニングは不断に行うべきであり、ましてや、この時期の動作構築は非常に不安定なものであり、全く行わなくなってしまう事で、せっかく獲得した運動動作を消失しまいかねないからです。



「第二成熟期」

この時期の運動発育発達における特徴は、“性特有の分化、個人化の進行、安定化の増大”です。



この時期には骨の横軸方向での成長が見られますので、骨密度が増加してきます。そして、プロポーションの変化も落ち着き、個人別の体格タイプが確定する事で各選手の“個人化”が進行します。



ここで心理的な側面はどのように変化するのでしょうか。

これは児童期後期から青少年期にかけて大きな変化を示します。というのは、10歳〜13歳の間で社会における自分の位置を見出そうとし、社会環境との対峙を行います。

これは両親にとって非常に大変な時期であり、不安感が常に付きまとう形になります。





(余談ですが)実は、ハルトマン博士に「発達心理学」の事について質問してみました。

運動学習やパフォーマンスの前提条件をトレーニングするには、生物学的な年齢に沿ってトレーニングを構築すべきなのは理解できました。

心理学でいう所の発達心理学という部分については、歴年齢で進めるべきでしょうか。それとも生物学的な年齢に合わせるべきでしょうか。という質問を投げかけてみました。



答えは、「生物学的な年齢に合わせるべきだ」という事でした。

何においても生物学的な年齢も基に考えるべきだと。



これを踏まえると、「○歳になったから○○」という事では無く、子供が生物学的な年齢でいうと何歳の特徴があるのかと常に観察し、それにこたえる対応をするべきなのが、運動という観点だけでなく、心理的な側面からも言える事が分かりました。

運動に従事していない方の場合は、こちらの方が納得しやすいかも知れませんね。





体系的なトレーニングシステムを構築する為には、選手が現在、生物学的な年齢でいうところの何歳に当たるのかを捉えた上で、心理的な側面を考慮する必要があり、逆を言えばそれが無ければならない、とも言えると思います。





前回と今回の二回で取り上げた「発育発達学」でしたが、これを踏まえた上での指導なのか、そうでないか、というのは大きな差を生じさせます。

それは金メダルの獲得数最大47個を誇る旧東独の実績が物語っていると思います。



ここにコオーディネーショントレーニングの抜本的な違いが生じる事の理由だと、個人的には思うのです。

あくまで一方法としてのコオーディネーショントレーニングをいくら取り組んだ所で、一時的なものであったら、それはトレーニングを行った“だけ”になってしまいます。



「根底にどんな考え、論理があって、どの時期に、何を行うのか」という所が重要であり、コオーディネーショントレーニング“だけ”が重要なのではない事を、感受期や成熟期という言葉を聞いていたら強く感じる次第です。



さて、次回は、いったん休憩の意味合いも含めて、僕個人のブンデスリーガ観戦記を稚拙な文章でご紹介したいと思います。

本場ヨーロッパのリーグ戦の雰囲気を少しでも共有していただけたら、と思います。





引用・抜粋)

?トレーニング科学国際集中講座 in Lepzig 基礎資料中

(編集:ライプツィヒ大学スポーツ学部/一般動作学・トレーニング学研究室

翻訳:高橋日出二(ライプツィヒスポーツ科学交流協会))より