【山田真哉】『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問からはじめる会計学』で会計の知識へ入ってみる
『会計知識』と聞いて「なにやら面倒だな」と思う人は少なくないのではないか。正直、ぼくも避けていたし、数字が苦手だ、ということから逃げている人もいるだろう。
ただ、会計に数字は不可欠だが、数字に強くなる必要はないというのが著者の言い分だ。以前のエントリでも触れているが、一番分かりがいいのは宝くじを買うか買わないかという判断をどこでするのか、というところだろう。
宝くじの場合、その仕組みまでを考えれば考えるほど、買うこと自体が馬鹿らしくなる。少し古いが『総務省』が公表している宝くじに受託業務についての資料と報告書を見てもらえれば、宝くじを夢を見るためだけに買うのは馬鹿らしくなるのは明らかだ。
この内訳を見ると、当選金割合が50%を超えないという現実がハッキリと記載されている。ひどい言い方をすれば、宝くじは射幸心を煽るだけ煽っておきながら、そのリスクについて説明される機会を設けられていない金融商品だ。
たとえば、銀行で金融商品としての宝くじを勧められた場合に購入するのかどうかといえば、買うと決める人はほぼいなくなってしまうのではないか。(詳細は前エントリ『金融リテラシーの重要性は『臆病者のための億万長者入門』を読むことで認識される』を参照いただきたい)
さて、本題に戻そう。宝くじの仕組みを知ってまで「買う判断をする人」はよほどのリスクをとる人であり、ギャンブルが大好きな人ということで間違いないのではないか...と、ぼくは思う。
宝くじは1枚300円から買うことができるが、本来的な価値で300円分宝くじを買うためには2枚購入する必要があるのは上記した理由から明らかだ。
数字に強いかどうかというのは、それを自然と嗅ぎ分けられるか、そういう異変に気づくことができるかどうかというのが会計を学ぶことの利点だ。
ちなみに、以下エントリも会計知識でいうキャッシュフロー*1 の話だ。
支出を全てクレジットカードで払うようにした結果wwwwwwwwwwww - 思考ちゃんねる
どういうことかといえば、クレジットカードの場合、買掛金となるため【購入⇒支払い】までに期間が生じる。この間の手数料や利率などは店舗側が負担してくれるから、購入者にとって最も有利な買い方となる。
クレジットカードで支払う場合、月末締めの翌月払いがベースで、買掛金の考え方は「お金を実質的に払ってない(未払い金だ)けど、商品を受け取れる」ということで、この実質的に支払ってない、というところがポイントになる。
現金で購入する場合、現金を持ち合わせていることが必要な上、確実に支払うことが前提なので、確実にこちらの資産が減ることが決定する支払い方だ。
この考え方を知っている人は、クレジットカードでの支払いが購入者側に有利なのを知っているため、実質的に支払っていなくても商品や製品を手にすることができることを知っているということだ。
だからといって、クレジットカードでの支払いを推奨するのが本旨ではない。今回、僕が本書を読んだうえでいいたいことは、日常生活の中で(お金について)損をしないように生きるには、会計の知識や数字に対するセンス(嗅覚)は必要だ、ということだ。
本書内で著者がメンター、つまり師匠と呼べる人物出会い、そこで諭されたエピソードが記載されている。
あるとき、院長は私に一枚のチラシを見せながらこういった。
「ライバルの○○ゼミナールのチラシだが、これを見てどう思う?」
そこには《公立トップ高校に120人合格!市内6教室にて展開!》と大きく書かれていた。
そこで私は、
「3桁の合格者数はインパクトがありますね。教室数の多さも保護者に『大手だから安心』という幹事を植えつけられますし、やはり大手は強いですね」
ともっともらしく答えた。
ところが、院長は首を横に振った。
「違うな、山田くん。120人合格はたしかに多いが、1教室あたりに直すと20人だ。うちは1教室しかないが、40人の合格者を出しているのだから、うちの合格者ははるかに多い」
「.......大手なのにたいしたことなかったんですね」
「それに、去年この塾は5教室で、今年1教室増えて6教室になったが、合格者数はほとんど増えていない。ということは、力が落ちてきているということだ----」
何のことはないような会話だが、冷静な分析を塾の経営者である「院長」はしていることになるのがよくわかる。
数字のセンスというのは、意味のある数字を見つけること、そして、その数字の意味することは自分にとってどんな影響があるのかを感情を乗り越えて考えられるようになるかどうかにかかっている。
買い物に行ったとして、目当ての商品はいくらなのか、昨日と比較して高いのか安いのか、その金額で買うことは自分にとってどれだけの幸福を与えてくれるのか。
それを自然とかぎ分けられるようになるのが会計の知識を学ぶ利点であり、本質だ。
本書は、可能な限り専門用語を用いずに書かれていることとあわせて、著者の身近で起こっていること(いいかえれば、ぼくたちの周りでも起きていること)を例に各章をまとめてくれているため、すごく読みやすい。
サラリーマンであろうが、技術者であろうが、主婦であろうが会計の知識が無駄になることは絶対にないと断言できる。
いくらAIが全盛になり、会計情報を機械化されたところで、それを読み取り、行動をする人間がいなくなることはない。企業会計であれば、AIが傾向を経営者や財務担当者に判断を仰ぐためにまとめることはあるだろうが、決めるのは人だ。
それは個人に置き換えてもまったく同じことであり、それを読めるのか読めないのかによって、お金の使い方にはじまり、生活の送り方が大きく変わる。
本書を読むことによって、少しでも会計の知識を身につけようと思ってもらえれば幸いだ。
さおだけ屋はなぜ潰れないのか??身近な疑問からはじめる会計学? (光文社新書)
- 作者: 山田真哉
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/03/29
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