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ドイツはライプツィヒからの帰国 その20 

今回は、Dr.Hartmanの「状況対応行動(戦略・戦術の基礎)」をご紹介します。



特に状況系と呼ばれる対人競技や球技系競技の中では、頻繁に状況が変わります。

または、自分単体もしくは自分達の戦術によって状況が好転する事もあれば、その実施達成度の如何によっては不利な状況を呼び込む事にも繋がります。



それらの多岐にわたる状況に適切に応対する事が“状況の変化”を生み出す競技の中では非常に重要になりますし、それを踏まえた上で競技に臨む必要があります。





状況対応となると、何が浮かぶでしょうか。

上でも触れていますが、格闘技や球技は状況が刻一刻と変化します。



例えばボクシングであれば、自らが打ったパンチが相手に当たれば、相手はそのダメージを受け、少したじろぎますが、避けられてしまえば右手のパンチを繰り出したのであれば、相手から見た場合の左側は空いていますから、パンチを貰う可能性があります。

そこで直ぐに体勢を立て直すのか、そのままにしておくのか、といった状況に対して適切な行動が取れるのかどうかという事が、今回の「状況対応行動」です。



もしくは環境に対しての適応という面でも状況対応がその後の運動動作へ作用します。

雨が降って地面が滑りやすい状況だった場合に、それを踏まえた走り方をするのか、そうでないのか、という部分でもパフォーマンスにおける差が現れてきます。





そして、対人競技とゲーム系競技の中で必要な要素を上げてみます。

対人競技においては、貫徹する行動、つまり“意志”が強く明朗である事が求められます。自らのスタイルを貫き通せるかどうかという点が試合の状況を左右するのです。



ゲーム系競技のおいては、“コンセプト”が存在します。それは何かと言えば、各自が得意な状況を作り出そうとするという事です。攻撃や守備の時間にどれだけ自分たちに有利な状況に相手を追い込めるのか、というやり方の事をコンセプトと言います。



そして、特に攻撃時においては「個人の創意性」が不可欠となります。それは、相手のコンセプトを打ち破る、相手の意表を突くとも表現が出来ると思うのですが、相手の対応が少し遅れてしまうような状況を作り出す事が求められ、実際に行動する必要があります。



個人となるとコンディションや心理的、などといった個々人で抱える要素がすべて異なりますが、それらすべてを包括的にまとめるのが「戦術」となります。



次は戦術と戦略の違いについて。



戦術とは、上記したように“個人別、集団別、チーム全体”としての行動様式を示すものであり、第一に、試合のルールに則ったものでなければ無ければならず、その上で“外的な状況を踏まえた上で最適化したパフォーマンスで達成”するものです。また、それは個人のパフォーマンス前提が結集されて発現されるものです。



そうなると、他者との関係性でパフォーマンスを発揮するものであり、計測は難しい事を指します。評価した結果「高いパフォーマンス」だとするのは、得てして主観的なものであり、人による見方の違いで評価が異なるのは、それに由来します。

例えば、サッカーにおいてある一部では高く評価されている選手も、違う観点から見てみた際には評価が低くなる事がしばしばあります。

これは、陸上や水泳など記録型競技と比較して、“結果”の評価が上記したように“他者との関係性”によることが理由であり、それゆえに計測は難しいという事です。





続いて戦略について。

戦略と言うのは、目標達成に向けて構築される方策であり、チームの強弱、つまり、相手との力関係によって変容します。

つまり、相手はこういうチームだから我がチームはこう攻めよう、という大局的な観点、試合を通じて行う方策案、という言い方が出来ると思います。



そして、創造性と言うのはチーム戦略の一部に組み込まれるものです。上でも書きましたが、目標達成に向けての方策、つまり、どのように動くのか、言ってしまえば“形”であり、例えば攻撃の中でアクセントを加えるのが創造性です。



注意すべきは、その創造性をチームとしての形の中に組み込まれているのかどうかを理解する事です。そして、上で触れている様に相手との力関係によってその形は変容せざるを得ないので、それを踏まえた上で考える必要があることを認識すべきです。





次に、度々出てくる言葉として“状況”という言葉がありますが、これについても解説がありました。

状況とは、常に変動する時状(条件)であり、それには環境が含まれます。人が密集しているのか、開けた場所なのか、ぬかるんでいるのか、乾いているのか、など自分以外の客体とも言えます。



また、状況を変える因子として“目標”というのも浮かんできます。

攻めるのか、守るのか。

選手間の関係性、これは人数や、そもそも人がいるのかいないのか、というもの。

行為と取り巻く条件、例えばサッカーのコーナーキックは誰がどこに蹴って、それ以外の人間が何処に動くのか、という事で変わります。



試合の重要度も状況を変えます。トーナメントなのかリーグなのか。リーグ戦でも優勝が決まる試合なのかそうでないのか、というどの程度のリスクが存在するのかによっても状況が異なります。



再現性があるのかどうかによっても状況が変わります。複数回訪れるのかどうか、という言い方になるのですが、例えば野球の打者は複数回打席に立ちます。





という具合に、“状況”という言葉一つとってみても、大きな幅があることが分かりますし、どれか一つだけ取って状況とは言えない、という事です。





では、「状況に適応した行動」とはどういう行動の事を言うのでしょうか。

例えば器械体操の跳馬を見てみると、認知プロセスが多いことが分かります。

跳馬と自分との距離を測った上で、踏切台へ走り出します。

歩調を合わせた上で、跳びますが、跳ぶ際の速度や角度、そして跳馬の高さは自分との距離が近くなる事で、刻一刻と“変化”し、跳馬に手をついて自らのカラダを駆使している際にも、自分のからだと着地面との関係を踏まえた上で動かしていく事が求められます。



以上を簡単に書きましたが、それでも認知すべきものが多く、“意識”は常に認知に向けられ、そこへの“適応”を迫られます。





つまり、あらゆる状況を認知した上で、その認知条件を満たせるような行為に及ぶことが状況に適応した行動と言えます。



その為には、すべての状況を分析する事が求められます。

会場や、道具、自身の身体や、相手があるのであれば相手、天候や風なども分析する必要があります。



そして、それを個々の選手がどのように認知するのか、という所まで指導者としては把握しておく必要があります。

というのも、悪天候でグチャグチャの状態になったピッチ条件でも、それを好む選手もいれば、それを嫌う選手もいます。

選手が起こす行動は、そういう認知のもとにしていることだ、と把握している事と、そうでないのでは大きな差が生じてしまいます。



以上をまとめると…

1.状況分析

2.対峙する相手へどのように行動するのかの決定

3.課題を動きで解決する(→いかに相手の不意を衝けるか)



という風に言えると思います。



今回はここまでで、次回は引き続き「状況対応行動」中の戦術・戦略の前提条件から始めたいと思います。





引用・抜粋)

?トレーニング科学国際集中講座 in Lepzig 基礎資料中

(編集:ライプツィヒ大学スポーツ学部/一般動作学・トレーニング学研究室

翻訳:高橋日出二(ライプツィヒスポーツ科学交流協会))より