発達を見せる息子
生後一ヶ月
“人間は, 運動が未発達なままで, この世に生まれ落ちてきます。自分の力で環境を切り拓く事ができるような動作を, 生まれつき持っているわけではありません。新生児にできるのは, 仰向けやうつ伏せの状態で, ごくわずかに体側を捻ることぐらいで, 頭を持ち上げることすらできません。また, 両眼とまぶたのコオーディネートさえ行われてないことが多いのです。”
以上は前回の記事 *1紹介した動作学−スポーツ運動学*2からの引用です。
- 作者: G.シュナーベル,K.マイネル,綿引勝美
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我が息子は(結果的に)母親の腹をぶち破って切られてでてくることになったのですが、生後一ヶ月経つ現在、上記の通り、寝ている姿勢を自ら変動させることもできず、わずかに体側を捻ることぐらいで、頭を持ち上げることなんてもっての外です。
しかし、最近になってできるようになったことが一つ。
それが「蹴伸び」です。
睡眠状態から覚醒状態になった途端に、両手両足を目いっぱいに伸ばし、身体背面の筋肉を収縮させることができるようになってきました!
蹴伸び状態にある彼の姿勢を横から見ると「Cの字」を描けるぐらいに仰け反っています。
正直、まだそこまで仰け反れるものでないと高をくくっていた私ですが、その可動性に驚きを隠せません。
無指向的群動作
現在、我が息子を始め(勝手に現在いる子どもの中心を自分の子供だとするあたりが親バカ)とする生後1ヶ月の子どもたちが行っている動作は、目標との関連が全くないもの。
でたらめでぎくしゃくしていて、まだ小さいがために「可愛いい」として扱われるものの、いい大人が同じ動作をしていたとしたら変な人扱いを受ける上に、煙たがられること間違いない。
まとまりがない上に目標も、目的もどこにあるのかがわからない。
それもそのはずで、現在、私の息子が属しているのは新生児期*3で、現状、彼らの視界は30cm程度で、コントラストの濃淡や輪郭確認をギリギリできるぐらいなものだ。
現在、我々が見えている世界と彼らの見えている世界は大きく異る。
それこそ、“我々の見識”を彼に当てはめても全く持って意味を介さないことになる。というよりも、彼にとっては全く意味を持たない世界だ。
以下は「ガイドライン 生涯発達心理学*4」からの引用ですが、新生児の焦点距離と授乳時の焦点についてです。
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“(中略)視覚に関していえば、焦点距離はおよそ30cmくらいで、コントラストの強い部分の境目を区別するくらいであるとされている”
“授乳している時の焦点に位置するのは母親の顔である。その中のコントラストの強い部分は、目や眉、そして髪の生え際である。新生児が凝視するその姿は、母親にとっては自分へのまなざしそのものなのである。”
母親と新生児が多くのアイコンタクトを図れる存在は母親にほかならない、というわけです。(他の人がミルクを上げている時には、その人がちょうど焦点位置に来るので、もしかしたら、そこで彼は「違う」と認識しているかもしれません。)
つまり、焦点距離が30cmくらいしかない中で目的や目標を持った動きを求めるほうが酷なわけで、それを理解しない大人は、“大人としての視界”を有した状態を前提に新生児話しかける。
それは虚空で終わりますが…
必死に適応を目指す
現在の彼が有している動作は…
- 呼吸
- 鳴く(泣く)
- 吸乳
- 嚥下(飲み込むこと)
以上の4点です。
改めて本を片手に彼の動作を観察していると、ここに無指向的群動作が加わって、“必死に重力世界に対して自らを適応”させようという様を感じて仕方ない。
動作学の中にある「両腕の“ふりまわし動作”」や「両脚の“足踏み動作”」も確かに行っている。
その動きは、出生直後の肩から先や膝下だけの小さい運動ではなく、生後4週間を迎え、特に下半身において股関節の伸展動作が見られるようになってきた。
まず、両手両足が自由に動くことは、前提として脊柱の安定が図れないことには達成できないハズ。
それを考えると、ここ最近は頭部の迷路性位置反射で、自分の頭の位置をできるだけ正常な状態*5に保とうと頭部を持ち上げているのだけど、それは四肢のダイナミックな動きを引き出す上での前提条件を整え始めたといえるじゃないか!
いいぞ!我が息子よ!
これからは、更に頚部や脊柱の安定性が増してくることが予想されるので、いわゆる「首がすわる」状態になるわけだ。
楽しみにしていよう。
次はどんな動作を身につけていくのか。
とりあえず、まつ毛が生えた。