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dolog=blogにdo、動詞をつけた造語です。 情報選択行動のlog(記録)として書いていきます。

ドイツはライプツィヒからの帰国 その15

今回から再度、講座の内容に触れていきたいと思います。

Dr.Minow「エネルギー系パフォーマンス前提」です。



以前、コオーディネーション能力というのは、「情報系パフォーマンス前提」だという事をお話させていただいたのですが、今回は、それと対を成すコンディション系の能力であるエネルギー系のパフォーマンス前提について触れていきます。



“運動能力”というのは、大きく分けると、ちから、コオーディネーション、瞬発性(日本でいうパワー)、持久性、そして、技術-スキルと分ける事が出来ますが、これらはあくまでも“人が利用しやすいように作り上げた造語”であり、様々なものを言葉に出来てしまいます。

それというのは、多岐にわたる見解が世界中に存在する事を指しますが、以前同様Dr.Minowは「それは健全な事である」と述べられました。



そんな多岐にわたる見解の中で、スポーツパフォーマンスを向上させていくために、何をどうしたらいいのか、は、その競技種目がどんなパフォーマンスモデルなのかを理解した上でトレーニングシステムを構築していく事が必要になります。



ちから性能力が優位な競技なのか、持久性能力が大きな割合を占める競技なのか、それとも瞬発性能力要素の強い競技なのか。

それらを把握する事が詳細なトレーニングプログラムを決定し得るものであり、詳細なトレーニングプログラムを実施していく事がパフォーマンスの向上に役立つ、という事です。



そして、ミノウ博士は続けて、「トレーニング科学の見地では、パフォーマンスを規定するエレメンタルな部分を解明していく事が必要」とし、人が動く以上は筋が働く事は間違いなく、その為にはエネルギー系パフォーマンス前提の“エレメンタル(根幹的)”な能力を調べ、それについて検証を続けていく事が必要だと述べました。





ここからは、その「ちから性能力」「瞬発性(スピード性)能力」「持久性能力」という各エネルギー系パフォーマンス前提について触れていきます。



『ちから(筋力)』とは…

筋活動によって、外的抵抗を克服し、あるいはその抵抗に反作用する事を競技者に可能とさせるパフォーマンス前提。

≪生体条件≫

○筋線維の断面

○筋内コオーディネーション

○筋間コオーディネーション

○エネルギー供給

○筋線維の構造

○人体計測上および体格上の特徴

○モチベーション



上記した中で、二つのコオーディネーション能力が出てきたので、その部分を説明させていただきます。

まず、“筋内コオーディネーション”は、ある力を働かせる際に、どれだけ多くの筋線維をリクルート、つまり動員できるか、という能力です。

次に“筋間コオーディネーション”は、ある動作をする際に、ある筋とある筋の同調性が図れるかどうか、という能力を指します。



≪ちから性能力の分類≫

最大ちから(最大筋力)

… 恣意的な最大の筋収縮を実施できるためのパフォーマンス前提であり、それによって、最大のちからを解き放つか、あるいは最大荷重を動かす事が出来る。



瞬発力(パワー) 

→ここでいう瞬発力は、スピードでは無く、動作速度が速い状態でのちから性能力の事を指します。

… 全身体あるいは身体部分ないしスポーツ器具の加速化の際、動作速度の増大によってさらに高い力の値の達成を競技者に可能にさせる能力。



ちから性持久

… 著しいちからを課すような長く持続するスポーツ負荷において、疲労に起因するパフォーマンス低下を最小限に抑えるパフォーマンス前提。





『瞬発性(スピード性)能力とは…』

*以前触れたフォス博士のスピードとここで述べるスピードは、若干の違いがあります。というのは、ここで述べる瞬発性能力とは、疲労状態によって左右される、という事が前提であり、フォス博士のスピードは、エレメンタル(根幹的)なスピード、つまり、エネルギー系の疲労状態に左右されない要素的な意味でのスピードなので、若干理解に苦しい部分があるかも知れませんが、ご推察いただければ幸いです。(詳しくは「ドイツはライプツィヒからの帰国 その9」をご参照のうえ、合同会社コレスポから出ているブックレットをお読みになられることをお勧めします。)



… 与えられた条件下で、最小限の時間内にスポーツ行為を実現する為のパフォーマンス前提(プロセス、機能システム)である。それはスポーツ活動中、疲労に起因するパフォーマンス低下が起きない時に現れる。



としています。



上でも触れましたが、人が動く、という事は筋肉が働くということであり、それというのは筋肉が動いている以上、エネルギー代謝が起こるという事を指しますから、エネルギー系能力になります。



そして、それは純粋なスピードを測れるのだろうか、という事をミノウ博士は述べました。だからこそ、エレメンタルな(根幹的な)部分を解明していく事が重要であり、フォスの研究をそういう意味で素晴らしいとし、最近ではスピードは情報系能力により近いパフォーマンス前提だとも述べられました。





続いて、『持久性能力とは…』

スポーツ活動の際、疲労によるパフォーマンス低下を最小限に抑える事を可能にするパフォーマンス前提。それは、スポーツ活動の持続時間に応じて、疲労に起因するパフォーマンス低下が生じた際に必要とされ、その他、速やかな回復をも促す。



≪生体的前提条件≫

1. エネルギー代謝

2. 心肺機能

3. 筋線維の構造



≪現象形態/分類≫

大きく分けると二つ

“基礎持久”と“競技専門持久”となる。

ただ、競技専門持久は、条件があり、最大努力下である事と、その指標は周期性種目に限定されます。というのも、球技のようなゲーム性競技や対人種目である格闘技は状況が毎回異なるため、明確な指標が得られない事が、その理由です。



“基礎持久”

これは一般健康スポーツにおいても取り組まれるものであり、能力特有の順応である。

その効果として下記のようなもの挙がる。

○負荷耐性の改善

○回復プロセスの加速化

○競技スポーツにおける競技専門持久能力のベースとなる





“競技専門持久”

基礎持久が能力特有の(各能力の発達に寄与される)持久性能力だとしたら、競技専門持久は活動特有の順応(適応)であり、要求されるからこそ高める必要があるものです。

だからこそ、上記した基礎持久をベースとした上で、競技専門持久性能力が改善されていくものであり、基礎持久性能力が低いのに、競技専門持久が高い事はあり得ない、と言えます。





そして、特に基礎持久能力のトレーニングを行う事は、すべての競技において重要です。

質の高いトレーニングというのは、翌日のセッションもしくは、次のセットまでの休息間で素早く回復する事が不可避であり、それを可能にするのが基礎持久能力だと言え、それを高めていくには“回復プロセスを踏まえた上での適切な負荷設定”が必要であるという事です。







それについては、次のブログ記事「運動負荷コンセプト(負荷と負担)」、そして、「持久系能力とそのトレーニング」で触れていきたいと思います。



引用・抜粋)

?トレーニング科学国際集中講座 in Lepzig 基礎資料中

(編集:ライプツィヒ大学スポーツ学部/一般動作学・トレーニング学研究室

翻訳:高橋日出二(ライプツィヒスポーツ科学交流協会))より