{DE}dolog

dolog=blogにdo、動詞をつけた造語です。 情報選択行動のlog(記録)として書いていきます。

{DE}dolog サッカーのピリオダイゼーションってご存知ですか?


難しい生理学用語でサッカーを語るな!

提唱者であるレイモンド・フェルヘイエンはオランダ人のコンディショニングコーチ
レイモンドのサッカーに特化したピリオダイゼーションの事に振れる前に、“ピリオダイゼーション”というものについて触れてみたいと思います。

スポーツの「トレーニング村」にちょっとでも足を突っ込んだ事がある方ならばご存知の方が多数いらっしゃると思います。
なので、もし間違った解釈をしていたら突っ込んでください。お願いします。

そもそもこのピリオダイゼーションというのは、旧ソ連のスポーツ科学者である、故L.P.Matwejewが当時10万人の競技者のトレーニング記録から算出されたバイオリズムを基にして考えだされた理論です。

人によってはこれを「マトヴェーエフ理論」とも言ったりします。それだけマトヴェーエフ博士の業績があるからこその理論設計だったという事だと思います。

んで、なんのこっちゃって所な訳ですが…

競技スポーツの高いパフォーマンスを発揮できる時期(マトヴェーエフ博士は“トップフォーム”という言い方をします)を割り出す、もしくは高いパフォーマンスを発揮したい時期から逆算的にトレーニング計画を立てて実施していく過程をの事をと言うんですね。

そして、このピリオダイゼーションというのは、一般的なトレーニングジムでも既に周知の事実だと思うのですが、「トレーニングの“質”と“量”」をトップフォームに向けて漸増させていくという(一番単純なモデルを使用すると)ものです。

つまり、量が多ければ質(強度)が低くなり、質(強度)が高くなれば量が少なくなる、という現代においては当然とも言える事の基盤を作ったのが、旧ソ連のマトヴェーエフ博士、という事になります。

このマトヴェーエフ博士以外にもルーマニアにボンパ、という著名な生理学博士がおります。

つまり、ピリオダイゼーションというのは、スポーツのトレーニング計画を立てる上で最低限知っておかなければならない負荷設定の仕方、という言い方が出来ると思います。

それをサッカーに特化させて数々の成功を導いてきたのが、冒頭に挙げたレイモンド・フェルヘイエンその人、という事です。

…ふー。。

よし、本題へ。ここでは細かい点にふれるよりも、大まかにどのような事を言っているのか、という視点でまとめてみたいと思います。

フェルヘイエンは言います。
「サッカーの戦術も技術も高めるのにサッカーをするのに、どうしてコンディショニングトレーニングだけはボールを使わずトレーニングするのか。」

僕自身は昨年、初めてこのセミナーに参加させていただいたのですが、改めて、ここまできちんとサッカーの中にコンディショニングトレーニングを落とし込む事が出来た事自体が素晴らしく、それは何よりもサッカーを分析したからこそなせる業だと言う事です。

生理学的な用語なんていっさい出てこない。というか出さない。
ATP-CPr系が…。
解糖系が…。
この時はTCA-Cycleで…。

時として“適応”や“テーパリング”という言葉は出てきますが、それ以外はサッカーを分析し、サッカーの言葉を使って、サッカーのコンディショニングについて、サッカーがどんな競技で、サッカーの“質が高い”とはどういう事なのか、について語っていきます。


サッカーにおいて質の高い動きとは何か


そもそもサッカーにおいて質の高いアクションとは何か。
爆発的なアクション。そして、それを連続して動く事が出来る事。それが終盤に差し掛かっても落ちない事。連続性が保たれる事。

この4点を達成する事がサッカーを取り組む上で非常に重要なコンディション要素となる、とレイモンドは説明します。
  1. 爆発的なアクション
  2. 爆発的アクションの持続
  3. 高頻度な爆発的アクション
  4. 高頻度な爆発的アクションの持続
以上です。どうですか。サッカーの指導をしている方や、見た事ある人ならイメージわくんじゃないですか?これら4つのポイントを如何に高めるか、を計画する事をレイモンドのピリオダイゼーションでは行います。

ゲームを見て評価し、運動の質と量が落ちてきた時間を把握し、そこからトレーニングに落とし込む訳ですが、それをするにも、監督やコーチ、ひいてはトレーナーの観察眼が必要になります。

トレーニング中の選手の動きがどうなったのか、それは個別的にもそうだし、全体としての評価もそうなのですが、まずはどのような動きをしているのか、を評価できるだけの観察眼が求められ、そこから更にトレーニングへの落とし込みが要求されます。


2週間3ブロックで1サイクル


ピリオダイゼーションというだけあって、レイモンドのピリオダイゼーションでも周期分けがされています。

つまり、トレーニングのプロセス(経過)を周期毎に分ける事を行います。ただ、レイモンドのピリオダイゼーションで特徴的なのは、2週間の3ブロックを1サイクルとしている点です。

ちょっと表示の問題で難しいのですが…
上の数字は何週目かを示しています。
2
3
4
5
6
FOOTBALL PREP EXECISE
FOOTBALL PREP EXECISE
FOOTBALL SPRINT MINIMUM REST
FOOTBALL SPIRINT MINIMUM REST
FOOTBALL SPRINT MAXIMUM REST
FOOBALL SPRINT MAXIMUM REST
11v11 / 8v8
11v11 / 8v8
7v7 / 5v5
7v7 / 5v5
4v4 / 3v3
4v4 / 3v3


ってな所ですね。
これで1サイクル、つまり1周期終わり。

ここで行われる負荷については漸増的になる訳ですが、それについても1サイクル目の1週目と2サイクル目の1週目では負荷設定を変えます。2サイクル目の1週目には、1サイクル目の2週目に取り組んだ負荷を取り組むんですね。

これが昨年行われたベーシックセミナーでの内容だった訳です。

今回のアドバンスの中ではチームスケジュールに対してどのように対応するのか、そのスケジューリングと、チームスケジュールに対して個別に対応するインディビジュアル・ピリオダイゼーション、そして、リハビリ・ピリオダイゼーションと話は進みました。

本練習以外もコントロールするべきだ


今年のアドバンスセミナーでこのチームピリオダイゼーションの中でも改めて僕の琴線に触れた部分があります。
それは、W-UPやPASSING EXERCISE(パス練習)や、SHOOT EXERCISE(シュート練習)、POSSESION GAMES(ポゼッションゲーム)を選手に対する“負荷”だと認識する、という点です。

これに関しては本当に参考になりました。
では、なぜ、そのように考えるのか、という点な訳ですが、レイモンドはサッカーを“質の高いアクションの連続で行われる競技”だと規定しているからこそだと思います。

彼の中で、“質の低い”アクションを課す様な事自体がナンセンスであって、それをオーガナイズする指導者もナンセンスなんだと思うんですね。

そして、一回のセッションが長引けば長引くほどに“質”が落ち、結果的にそれはサッカーのパフォーマンスを落とした動きを繰り返す事となる、と。

「口では質の高い動きを求める指導者が、実質的にトレーニングを課す段階になって、長時間動き続ける事を求める事から、結果的に質の低いサッカーをさせる事になる。それは何をトレーニングした事になるのか。」

質を高めるには質の高い動きを持続できる時間、つまり短時間でのトレーニングを、尚かつ、それを持続できる様なオーガナイズをするべきである、という事ですね。

そこで、次はお読みいただいている皆さんへ質問。

皆さん、上記したW-UPやPSSING EXERCISE、POSSESSION GAMEを取り組む上でどう考えて実施しますか?

レイモンドの考えでは、(当然と言えば当然ですが…)ここにも質と量の関係を勘案した上でトレーニング構築をすべきだと。

特にシュート練習やポゼッショントレーニングに関しては、負荷と休息の原則を当てはめた上で実施すべきで、15分間も連続でポゼッションをやる事によって何を得たいのか分からない、とレイモンドは述べていました。

ディフェンスに質の高いディフェンスを求めるのであれば、高い質の維持できる運動時間とディフェンスの枚数を設定すべきであり、ディフェンスの人数が増えれば増えるほど負荷は減り、人数が少なければ少ないほど負荷が高くなる。

これは一人の運動域が人数が増えれば減り、人数が減れば増える事に起因します。

それを無視してオーガナイズすべきでしょうか。

パス練習にしても、その強度を設定する際にはどうすべきでしょうか。
パスのスピードや動きの複雑さ、そして、プレッシャーがあるのかどうか、という点で負荷設定の仕方が変わります。

W-UPにしても、時間をかけてゆっくりとした低強度のW−UPを行うのか、短い時間で質の高いW-UPをやるのか、をチームのスケジュールの中で試合がいつあり、コンディショニングトレーニングをいつ入れるのか、その前後にはどちらを選択するべきなのか、といった事を厳密にコントロールします。

それは、他のパスエクササイズでもポゼッションやシュート練習にしても同様の事が言えます。一本のシュートすら負荷として捉えるのです。非常に高強度である“シュート”をいつ、どう行うのか。

何故、シュート練習までコントロールすべきなのか。これは筋肉の収縮-弛緩についての予備知識が必要なのですが、シュートというのは動作として非常に高速運動です。
疲労した状態でシュートを打つ場合には、脳からの伝達が遅くなる事が予想されます。

という事は、例えばインステップで目一杯の力を込めてシュートを打つという事は、疲労状態にあればあるほど、適切なタイミングで大腿四頭筋が収縮して、ハムストリングスが弛緩する、という連関を保つ事が出来なくなる可能性がある。

ハムストリングスが収縮している最中に目一杯引き延ばされてしまい、それが肉離れの原因になってしまいかねない。

という観点から、シュート練習をいつ、どのタイミングで入れるべきなのか、というのを指導者は考えるべきである、と。

それは怪我を負って競技に戻るリハビリを行う選手にも適応されるべきだと言うんですね。


リハビリ・ピリオダイゼーション


これに関しては本当に頭が下がる思いでした。
例を挙げて話を進めていこうと思います。

右膝の十字靭帯を損傷した選手がリハビリを開始します。
バイクを漕げる程度まで回復したとして、皆さんはこの選手にどの様にバイクを漕いでもらいますか?

20分程度継続的に漕がせますか?

レイモンドは言います。

“サッカーのリハビリもサッカーの本質を理解した上で実施する必要がある”

サッカーの本質とは何か。
それは質の高いアクションを高頻度で最後まで持続する事、です。
という事は、まず、質を高める事から始めなければなりません。

バイクを漕ぐにしても、負荷の掛け方を一定の状態で漕がせるのでは無く、波を作る必要がある。つまり、インターバル形式で進むべきであるという事です。

いきなり高強度では無く、現在の状態を受け、50%程度まで高めた状態で漕ぐ時間と30%程度で漕ぐ時間を作り、質の高い時間と低い時間を作る。

それが問題なくこげれば、その50%の質を70%の質へ転換し、30%の質を50%へと転換する必要がある、というのです。

その時間も例えば1分:3分で取り組んでいたとすれば、それを1分:2.5分と徐々に強度の低い時間を短くしていき、頻度を高めていく様に変化させていくべきで、永遠と15分や20分を漕ぎ続けたとしても、それは一般生活に戻るには必要な事かもしれないが、サッカー選手の負荷のかかり方では無い、という訳です。

そして、その継続時間は、チームがピリオダイゼーションのどこに位置しているのか、に依存します。

この部分に関しては上で書いたチームピリオダイゼーションが何サイクル目の何週目にあり、この選手の復帰目安は何サイクル目になるのか、という事を考慮した上で負荷時間の設定をしていきます。

このリハビリ・ピリオダイゼーションも、チームとしてのスケジュールがきちんと計画的に組まれている事が前提ですから、チームとしてこのピリオダイゼーションが取り組める環境にある事が必要です。

いずれにしても、昨年のセミナーでレイモンドが言っていた事が全てだな、と思ったのですが、彼は「60-70%の状態で6日トレーニングするよりも100%FITした状態で4日トレーニングした方がいい」と述べました。

この100%という所がミソですよね。“回復させる事”が前提条件になっています。
何故なら、人の体は修復をするのは寝ている時に成長ホルモンが分泌されて…というのは周知の事と思いますが、指導者がそれを作れているのかどうか。

よく冬明けに各チームが「どれだけ走っているのか」という量的な記事が良く踊りますが、その質的な部分について振れられる記事は中々目にしません。
レイモンド的に言えば、質の高い量を求めれば何が起こるのか。それはケガだ。という訳です。


「能力が多少劣っていても、怪我なく無事に走り続ける馬は名馬である」とする考え方がありますが、ケガをするぐらいまで追い込んだ結果、苦しくなるのはチームであり、そのチームを指導する監督である訳です。

だからこそ、ケガをしない状態を常に作っておく事がチーム運営上は求められる、という事です。


質を求める姿勢

最後に書いておきたい事が一つあります。
それはレイモンドの”質“を求める姿勢が本物だという事を目の当たりにした事です。

今回のセミナー(僕が参加したのは関東)では彼の実演が含まれていたのですが、そこでW-UP、コンディショニングトレーニングのフットボールスプリント、ゲーム形式のコンディショニングトレーニングを行いました。

まず、W-UPでの一コマ。
これをお読みの方は運動や競技の指導者をされている方が多いと思うのですが、取り組む姿勢が悪い選手っていますよね。
レイモンドはそれを許しません。

「名前が分からないから直接言う事が出来ないので、今回はやらないが…」と前置きした上で彼はこういいました。

「既に3人はロッカールームに行ってもらっている。ここにいるべき選手としての態度では無いからだ。」

またその前には伏線としてこんな一幕もありました。

「彼は60%プレイヤーだ。彼のW-UPに取り組む姿勢を見れば分かる。彼は自分がボールを失っても懸命に追う事はしないだろう。60%でしか動けないから。」

次はFOOTBALL SPRINTを取り組む前段階として、“パスを受けてからターンをしてゴールへ向かい、GKへパス”という内容を取り組む際に、パスを出した選手のパスが実演をしていたレイモンドの左足へ転がっていきました。

するとレイモンドは「What are you doing !?」とパスを出した選手に声をかけます。

ターンをしてほしいのであれば、出来る方へパスを出せ、というんですね。尚かつ、パスを出す方はディフェンスからのプレッシャーも無いのだから。

他にも、そこからワン・ツーへ発展したのですが、そこでもラストパスを何も考えずに直線的にまっすぐ強いパスを出してしまう選手に対して「What are you doing !?」と聞きます。

ラストパスだろ!?
どうやったら彼はシュートを楽に打てるんだ!?

と言った具合に。


この他にも彼の”質“を求める姿勢は実演中、本当に多く見受けられました。
自分自身、決してスポーツの現場で妥協していた訳ではありませんが、一線級の“質を求める姿勢”を目の当たりにした事で、すごく刺激になりました。

ただ質を求めるだけでは無く、その質を高める為にはどうしたらいいのかどのように進めれば質を高めていく事に繋がるのか選手が質高く動ける様にする為にはどう回復させたらいいのか、と常に質を高める為に自らが取るべき行動を考えている姿勢を見る事が出来たのは、今回の内容は勿論、「指導者として」のレイモンドを見れた事は本当に貴重な経験が出来た思いです。

質の高いサッカーとは何なのか、質の高い動きとは何なのか、質の高い練習とは、質の高いトレーニングとは、質の高いリハビリとは、質の高い○○…

質の高さを求めるには、質の高さが何なのかを理解している必要があり、その為には指導する立場にいる人間が質を求めるに値する知識や知恵を持っておくべきなんですね。


内容については通訳を担当してくださった相良さんがブログ上で紹介されているので、そちらも参照してくだされば…と思います。他にもリンクを貼っておきます。そちらの方が分かりやすいかもしれません。。。

リンク


ENDO,Ryosuke